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「発達心理学特論」のための覚書①
- 2007/04/05(Thu) -

「発達心理学特論」のための覚書


S.フロイトの精神分析が盛んであった20世紀の初頭では
発達早期の母子関係の研究が進んでおらず
『母性的なケア(共感的なかかわりあい)』
の重要性が意識されることも殆どなかった。


発達早期の母子関係や母性的なケアの大切さが
精神分析や臨床心理学で意識されるようになったのは、
愛着理論(アタッチメント理論)を提起したジョン・ボウルビー
ホスピタリズム(施設症候群)を研究したルネ・スピッツ、
分離‐個体化期の発達段階で生じる分離不安を指摘した
マーガレット・S・マーラーらによってだった。


彼らの研究は、
『人間の健康で安定した精神発達には、
発達早期の母性的な愛情・保護・ケアが必要である』
ということである。


病理的な情緒障害や人格障害との関係では、
『情緒的な見捨てられ感や
孤立した状況での無力感に長時間さらされないこと』
が重視されている。


S.フロイトは
母親と乳児期の子供の相互的な関係性には余り関心を払っておらず、
非言語的コミュニケーションに対する
発達早期の乳児の能動性や主体性を実際よりも低く評価していた。


イギリスの精神科医ジョン・ボウルビーは、
母親と子供の間に形成される
対象にぴったりとくっつくアタッチメント(愛着)が、
その後の精神発達に大きな影響を与えると示した。


ボウルビーは、
母親が不在となりアタッチメントが形成できない状態を
母性剥奪(母親剥奪, mother deprivation)と呼び、
母性剥奪が子供の心身発達に悪影響を与えることを
多数の観察事例から確認した。

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「発達心理学特論」のための覚書②赤ちゃんって素晴らしい!
- 2007/04/19(Thu) -

赤ちゃんって素晴らしい!!


人間は直立歩行するようになってから
徐々に大脳が大きくなり
歩くのに適するように骨盤が変化して産道が狭まったため
本当ならまだ1年くらいは母胎内で発育するべきところが
赤ちゃんの頭があまり大きくならないうちに
出産してしまわなければならなくなって
人間は「生理的早産(ポルトマン)」で
生まれるようになってしまった。


だから人間の赤ちゃんは生まれた時は全くの未成熟・・・
身近な大人の世話を受けなければならなくて
人間の母子関係は長期化し
養育の影響を強く受けることになった。


でも、赤ちゃんは
運動面ではとても未熟で無能だけれど
外界からの刺激に反応する感覚機能は
とてもとても有能なのです!


赤ちゃんはホントに早期から
人に対して特殊化された社会的欲求
とみなせるような反応を示すのですって!!


凄いな!凄いな!
なんだかとっても嬉しいな!


(続く・・・)

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「発達心理学特論」のための覚書③エントレイメント
- 2007/04/20(Fri) -

赤ちゃんが極めて早期から示す
人に対する特殊化された社会的欲求とみなせるような反応。


それは例えば「エントレイメント
これは赤ちゃんが相手の働きかけ(音声や表情)に合わせて
身体を動かす現象をいいますが
この現象が親の働きかけを誘発し
社会的やり取りを継続させる効果を持っています。


母子関係では、
一見母親が一方的に赤ちゃんをコントロールしているように見えますが
実は赤ちゃんの側でも
母性を開発し母親からの働きかけを誘発するような特性
・・・人の声、人の顔や表情への敏感性・・・
生得的に備えているのです。


また、赤ちゃんは出生直後から「人と物」の区別をすることが出来ます。
特に人の表情に敏感で
目は人との関係をつくる上での基盤になりますが
赤ちゃんの誕生直後の視力は0.02程度、見える距離は30cmぐらい。
これはちょうど母親に抱かれた時
母親の顔だけがはっきり見える距離です。


また、赤ちゃんは
生後2週間くらいは色彩のない世界に住んでいて
明暗のコントラストによって対象を見ているので
特に顔の中でも
髪の生え際や目のあたり」に焦点を合わせることになります。


このことが、母親に「赤ちゃんは自分を見ている
自分に無言で語りかけてくる」というような気持ちにさせます。
そこで母親も赤ちゃんに話しかけたり、赤ちゃんが何を欲しがっているのか
読み取ろうとする・・・・
こうして交互の眼差しの交し合いが始まるのです。


更に、赤ちゃんは母親の目に焦点を合わせ
母親からの反応を引き出すことに成功します。


母親を見つめることによって表情を見分けられるようになる。
生後わずか1時間程度の赤ちゃんが、
母親の表情に対しても敏感であり
人の表情を見分け、
怒りや喜びの表情に応じた表情をすることが知られています。
こうして母親は赤ちゃんが自分と同じ表情をするのを見ることによって
養育行動が開発されていくのです。


例えば、赤ちゃんはおっぱいを吸う時
吸いつぎ」という行動をとります。
チュ―チュ―吸っていたかと思うと、ふと休む。
あれっと思った母親は、「よしよし、よしよし」と赤ちゃんをあやし、
抱きながら赤ちゃんの身体をそっと揺らしてみる。
そうするとまた赤ちゃんはおっぱいを吸い始め、またしばらくすると休む。
母親は「もうお腹いっぱいになったのかな?」などと言いながら
今度は赤ちゃんのほっぺにそっとタッチしたりしてみる・・・


こうして赤ちゃんの側からの
母親の働きかけを誘発する「エントレイメント」によって
母子相互作用の基盤が形成されて行くのです。


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「発達心理学特論」のための覚書④母親の原初的没頭
- 2007/04/21(Sat) -

では、妊娠中期頃から、赤ちゃん出産後2~3ヶ月の間
母親はどんな状態にあるのか?


母親の原初的没頭(maternal preoccupation)
とウィニコットは言います。


小児科医として6万例にものぼる幼児と母親の観察から
「幼児なんてものは存在しない・・母親と幼児は・・一つの単位状態を形づくっている」
として、幼児にとっての母親は生命の源としての「母親存在」であり
母親対象そのもの」であると論じました。


そして
ほどよい母親(普通に見られる献身的な母親)」が
「正常な病気」とも言えるような状態に陥る「母性的かかわり」が
母親の原初的没頭」なのだと。


それは
「引きこもり」とか「乖離・もうろう」とか、
ある種の「分裂性人格」とか
より深いレベルの障害にもたとえられる
繊細で、豊かな感受性をもって赤ちゃんのニーズを感じ取りつつ、
赤ちゃんに応えられる状態・・・


そうした「とらわれ」の状態は
母親が健康を取り戻していくに従って次第に回復し
徐々に母親自身の人生を獲得」していく、と。


更にウィニコットは
「ほどよい母親(good enough mother)」とは
どこにでも見られる、ごく自然に、当たり前のことをしている母親で
そこには「機械のような完全さや、知的理解」は必要ではなく
「母親の心に自然に湧いてくるやりかたで」
「自分自身の判断を信じられる時が母親の最良の状態である」と述べています。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


実際、私も娘の生後数ヶ月間の不思議な経験を忘れることが出来ません。
首も据わらない赤ちゃんの娘とたった二人きり
ぴったりと閉ざされた空間の中で
どちらが母親でどちらが赤ちゃんなのかすら区別がつかないほど
混沌とした、濃密な、とろけるような時間を過ごしました。


あの蜜月・・・
二人が渾然と一体化したような蜜月・・・


あの数ヶ月間の濃厚な生命そのものとのかかわり
全身の皮膚を通して私の身体の核にまで愛の体験を染み透らせ
深い癒しを与えてくれた・・・


そう思っています。


なぜならば
その経験を経るまで
深い孤独や絶望を感じると
必ず、絶え間なく私を襲ってきた
全身の皮膚を針で突き刺されるかのような
あの耐えがたい痛みが
ほとんど起きなくなったからです。

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発達心理学特論のための覚書⑤人間発達の可塑性
- 2007/04/26(Thu) -

日本で報告されている社会的隔離児の事例


小さな町で発見された2人のきょうだい。
姉は6歳、弟は5歳になっていた。
救出前、1年8ヶ月間、狭い小屋に閉じ込められる。
排泄やお風呂などの世話はない。
うどんや重湯などをときどき与える程度。
救出時、身体発育はせいぜい1歳~1歳半。
歩行も出来ず、発語は姉が2語程度、弟はなし。


2人は正常な環境に移された途端
めざましい身長や体重の回復を見せた。
健常児の描く身長の発達速度曲線はゆるやかだが
2人は圧縮した曲線を描いてフルスピードで回復していった。


栄養すら与えられず、
言語や社会的・文化的な刺激も与えられない状況下で
「冬眠」あるいは「凍結」していたプログラム
正常環境に戻された途端、起動したかのようであったという。


「冬眠」や「凍結」は身体を大きくせず、
身体全体の代謝を低め、たまにもらうなけなしの栄養を
まず脳に送り、ダメージを最小限に食い止めようとする
防衛反応なのかもしれない。


さらに、比較行動学者のローレンツ
幼形(neonate;幼い容貌や姿)は、
大人の攻撃性を抑止する防衛の一種
かもしれないと指摘する。


「冬眠」や「凍結」は、生体としての内部の代謝と
養育者の攻撃性への抑制という
両面での防衛の仕組みなのではないか。


2人の過酷な生育環境への柔軟な適応ぶりは
人間が何重ものガードに護られていることを如実に物語っている。

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発達心理学特論のための覚書⑥子どもは変わる
- 2007/04/29(Sun) -

F(姉・6歳)とM(弟・5歳)のその後


二人が乳児院に収容されてから、はすぐに
担当保母との愛着関係を形成し、順調に回復していった。


しかし、
保育者に馴染めず、愛着を形成する事が出来なかった。
特に対人関係の遅滞は顕著で、姉や仲間、大人に対して
自分からかかわりを持とうとはしなかったため
様々な面で遅滞が著しく、回復は足踏み状態に置かれた。
しかし、担当保育者が交代したことにより
弟は担当保育者になつき、姉との差が縮まることはなかったが
回復へと向かっていった。


二人には暦年齢1年の差があり
姉の場合は、
母親から哺乳され多少なりとも世話を受けた可能性がある。
しかし弟は、いっそう悪化した家計の状況に置かれ
母親も完全に育児放棄していたと思われ
収容前の二人の対人関係に差があったことを推測させる。


この事例は、
大人との愛着の成立が外語的コミュニケーションや対人的適応に
極めて重要であることを示唆している。


愛着は、
子どもが非言語的コミュニケーション・ルーチン(手順)を形成した
大人との間の心理的絆を指すが、
このルーチンは、対人関係や言語獲得の先行条件となるものと考えられる。


愛着の発達についてボウルビィ(Bowlby.1969)は
「言語発達と非常によく似た臨界期がありほぼ3歳頃である」
と仮定している。
しかし、隔離から救出されて正常環境に戻された時
姉・弟はそれぞれ6歳・5歳であった。
その後の二人の回復から考えて
愛着形成において単純な暦年齢による臨界期の仮定はふさわしくない
と思われる。


養育放棄された子ども達は
いかに発達遅滞を起こしていても
特定の大人との間に頻繁に社会的なやり取りがなされ
コミュニケーション技能の練習の機会が与えられれば
容易に遅れを取り戻し
年齢にふさわしいコミュニケーション技能を
発揮するようになることが解る。


対人関係の発達には
母親だけが大切で母子関係が全ての基礎になるわけではなく
父親や祖父母、養母、保育士など、
広い社会的つながりの中に置かれていることが重要だと思われる。

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発達心理学特論のための覚書⑦人間発達・無限の可能性
- 2007/05/02(Wed) -

姉(F)と弟(M)
就学猶予2年を経て小学校へ入学、順調に中学・高校へと進学。


Fは
自分自身の記憶能力の低さを認識し
それを克服するため、勤勉に努力するようになる。


Mは
部活に打ち込むようになり、運動部の部長にも選出された。
Fに比べると自己の能力に楽観的だが
自分が興味を持ったことには
積極的に取り組む態度が見られ、努力家である。


思春期以後の言語・認知発達を促進したのは
自分自身を自覚的に内省
自分自身を高めたいという動機づけの側面だった。


2人の回復の姿からは
人間の持つ多くの潜在的な可能性
それらの開花のために
人は何重ものガードに守られていることを教えられる。


幼児期を通じて隔離され
栄養面・知的・社会的に閉ざされ、制限された環境に置かれても
それを克服する自主的な成長の力は大きい。


親だけではなく
同胞や仲間、さらに、近隣の人々
保育士や教師、様々なメディアを通しての人々。
そうした人々との出会い社会的なやりとりを通して
人は人間化に向かって歩んでいく。


人間発達を規定する要因は
遺伝も環境も輻輳的に加重し合う」という従来の知見が追認され
さらに
遺伝要因には臨界期を持つ領域と
防衛機制によって維持される領域があり
タイミングが重要であることや
特定の人との愛着の成立
人間化への鍵を握っていることが窺われる。

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発達心理学特論のための覚書⑧想像力・生きる力
- 2007/05/05(Sat) -

人間が強制収容所において、外的にのみならず
その内面生活においても陥って行くあらゆる原始性にも拘らず
たとえまれではあれ著しい内面化への傾向があったということが
述べられねばならない。


元来精神的に高い生活をしていた感じ易い人間は
ある場合には、その比較的繊細な感情素質にも拘らず
収容所生活のかくも困難な外的状況を、苦痛ではあるにせよ
彼らの精神生活にとってそれほど破壊的には体験しなかった。


なぜならば彼らにとっては恐ろしい周囲の世界から
精神の自由と内面的な豊かさへと逃れる道が開かれていたからである。


かくして、そしてかくしてのみ
繊細な人間がしばしば頑丈な身体の人々よりも
収容所生活をよりよく耐え得たというパラドックスが理解され得るのである。 


                    (フランクル、1965)


オーストラリアの精神医学者フランクルは、
第二次世界大戦中、アウシュビッツの強制収容所に捉われ
奇跡的にも生き延びることができた。


人間は、極限状況の中では、
残酷で、忌まわしい人間性、原始性を示す。
未来を意識した時、直接感覚に訴えてくる現在から離れるような
精神活動が活発になる。


極限状況にあってもなお、
人は未来を意識し、想像力を働かせることができる。


また、そうできた者だけが精神の浄福を保ち続け
生きる力を与えられる。


フランクルの言葉には
それが端的に表現されているのだろう・・・

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発達心理学特論のための覚書⑨想像する心
- 2007/05/08(Tue) -

想像力(イマジネーション)
目には見えないものを思い浮かべる能力である。
人は目で見、耳で聞き、手で触れる現実の他に
想像力で作り出した世界を自分の現実にすることができる。


今、目の前で起こっていることは
見たり聞いたりすることによって
また過去の出来事も記憶を呼び起こすことによって
知ることができる。
しかし、まだ見ぬ明日は
単に五感を働かせ体験を再現するだけでは
思い描くことは出来ない。


未来についての表象を作り出すことが
想像力の働きの最も重要な側面
である。


未来を思い描く素材として私たちは経験を利用している。
経験が豊かであるほど想像世界も豊かになる。
特に年齢が幼いときには
五感を使った直接体験が不可欠である。
成長すればテレビや本での疑似体験も想像の素材になる。
この直接体験と疑似体験を併せて経験と呼ぶ。
想像力は経験に基づいてはいても、経験そのものではない。


経験が加工される時に、何か新しいものが付け加わる。
経験は再現される文脈に合うように再構成され、姿を変える。


ここに新しいものが生み出される可能性がある。


経験を「不正確に」再現し、再構成する過程で
新たな創造の可能性が拓かれるのである。

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発達心理学特論のための覚書⑩「心の理論」はなぜ重要か
- 2007/05/11(Fri) -

1970年代末頃から「心の理論(セオリー・オブ・マインド)
といわれる研究分野が急速に発展している。


「心の理論」とは
他者がその人自身の「心」というものを持っており
他者の行動はその「心」の働きによって理解し予測できる

という考え方をいう。


幼児期の子どもは、自分が知っていることは人も知っていると
思っているかのような行動がごく普通に見られる。


例えば
子どもが母親から買い物を頼まれ、店に行って店のおじさんから
「何にしましょうか?」と尋ねられた時
「お母さんが買ってきてっていってたものだよ」と答えたりする。
こうしたことは幼児期にはいろんな形で見られるものである。


自己中心的思考」や「自ー他の区別の未分化
などと呼ばれてきたこの問題は
「心の理論」というテーマで研究が進展してきた。


心を理解するということは、物を理解するということとは違った
別の難しさをはらんでいる。


最近では、「心の理論」は
幼児期に飛躍的に発達することが示されるようになってきており
幼児期の4歳~6歳の間に
心を読み取る能力獲得の最初のステップに立ち
そのことが子どもの思考や行動を豊かにしていく。


心を読み取る能力は
集団生活を送る人間が進化の過程で身につけてきた能力であり
動物研究やロボット研究においても
ますます重視されるようになっている。

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発達心理学特論のための覚書⑪動物に他者の心は理解できるか?
- 2007/05/21(Mon) -

「心の理論」の研究は
チンパンジーにも「言語」が使えるかどうかを研究していた
アメリカの霊長類学者プレマック(Premack,D.)らが1978年に書いた
チンパンジーは心の理論を持つか?」という論文にはじまる。


これは「動物は心を持つか?」といった
ある意味、心の定義の仕方次第で答えが決まるようなものではなく
動物に他者の心は理解できるか?」という
新たな問いを投げかけたものである。


プレマックによれば「心の理論」とは
他者(他の動物)の行動に心的表象を帰属させることをいう。


物理学や化学のような「物の理論」が
電気・磁力・分子のような見えないものについての推測と
次に起こる現象の予測力を持つように
「心の理論」は、心という見えないものについての推測と
次に起こる行動の予測力を持つ
、とプレマックは説明した。


「チンパンジーは心の理論を持つか?」という問いの答えは
「チンパンジーにはかなり困難」というものだったが
プレマックが提案した「心の理論」の考え方は
その後の発達心理学の中で広く深く受け入れられていった。

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発達心理学特論のための覚書⑫心をいかに読み取るか
- 2007/05/22(Tue) -

動物が心を持つかどうかということ以前に重要なことは
飼い主である人間の側にペットの一挙手一投足に
心的表象を帰属させる強い傾向があるということである。


たとえば、イヌが尻尾を振っていれば「機嫌がよい」
吼え声が止まらなければ「警戒している」というように
飼い主は自然にイヌの「心」を読み取ってしまうのである。


イヌやネコのように長く人類とともに生きてきた動物種だけでなく
ヘビ(爬虫類)、イモリ(両生類)、ミノカサゴ(魚類)などのように
単に表情がないだけでなく、他の人には気持ちが悪いと感じられたり
場合によっては毒を持つ動物にさえ、その挙動に「心」を読み取ってしまい
「かわいい」と感じてしまう人がいるのは、まさに「心の理論」の問題である。


また一方、今やロボット
工場労働に従事する産業用ロボットとして活躍している。
こうした高度のロボット生産技術は
やがて家庭用ロボットへと進む道を歩んでいる。


とりわけ、少子高齢化に伴い
生活分野、教育分野、医療福祉分野などでの
ロボット技術の応用が期待されている。


家庭では
掃除、警備、保育、医療補助、介護などの作業に従事する
ロボットの実用化が見込まれている。


その時
ロボットが人間と共生するために
その時々に変化する人間の意図や感情など
「心をいかに読み取るか」についてのシステム設計が最も重要
となる。


ロボット学者が「心の理論」研究に関心を持つのは、このような観点からである。


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発達心理学特論のための覚書⑬自閉症と「心の理論」
- 2007/05/23(Wed) -

1980年代に「心の理論」研究を推進した研究分野は
自閉症(自閉性障害)の発達的研究である。


自閉症は、1943年に
オーストリア出身のアメリカの精神科医カナー(Kanner,L.)
それまで知的障害と誤解されていた子どもで
生後間もなくから著しい自閉傾向を示す11例の児童を
感情的接触における自閉的障害として報告し
早期幼児自閉症」の病名を与えた。(Kanner,1943)


自閉性障害は、
DSM-Ⅵ(『精神疾患の分類と診断の手引き』第4版)と呼ばれる
精神医学の診断基準によって、
広汎性発達障害(pervasive developmental disorder;PDD)
下位の障害と位置づけられ、
きめ細かな診断基準が設定されている。


したがって、自閉症を一言で定義することは難しいが
大まかに次のようにまとめることができる。


対人障害:
 たとえば、目と目が合わない、仲間関係をつくれない、
 楽しみや興味を他人と共有できない、など。
意志伝達の障害:
 たとえば、話し言葉が遅れる、反復的な言葉を使う、
 身振りが出ない、ごっこ遊びがない、など。
行動・興味・活動の限定、反復常同的行為:
 たとえば、1日中ビー玉で遊ぶ、光源に向けて手かざしを反復する、など。




 

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